先生への突撃インタビュー(全17回予定) 平沢先生

活性化委員会 広報委員会 長谷川委員長

いよいよ新企画の “先生への突撃インタビュー”がスタートすることになりました。本企画は、教室とOBとの連携を強めることで、早稲田大学の応用化学科が、今後ますます隆盛になっていってもらいたいと考えたOB会活動のひとつです。

平成16年に活動を開始した応用化学会活性化委員会ですが、会報にもすでに報告されているように、応用化学会組織の強化や財政基盤の強化を図り、教室の研究レベルの向上支援や大学間競争に勝ち抜いてゆくために、応用化学会に関わる者すべてが、自覚を持って、 自ら行動し、お互いが連帯意識を持ち続けることが重要と思います。
活性化委員会の広報活動の一環として、これからもHPや会報を通じて、情報の発信を継続してゆくことが大切だと考えています。

新たな企画として、企業の新製品開発などに役立つ情報を、教室側の先生方に提供していただき、大学と企業間の情報交流のきっかけが生まれてくるようにしたいと考えました。可能な限り、素人に理解しやすいような内容とするように心がけてゆきます。

まず、トップバッターとして平沢 泉教授にご協力をお願いしました。 平沢先生は、皆様ご存知のように応用化学科をご卒業された後、(株)荏原製作所で水処理 技術の研究開発に従事されましたが、その後母校の出身研究室で、研究と同時に若手研究者の育成にあたられておられます。 

第1回 平沢 泉 教授(化学工学研究室)
平沢教授写真

先生が研究を始められたきっかけは何ですか?
――― 溶液のゆらぎの中から、結晶が生まれるのを見た。

― 学生時代、それも高校生のとき、水俣病、イタイイタイ病などの公害問題をはじめとする化学物質による人体、生態系への悪影響を目の当たりにして、物質の特性を追求する化学 の分野に入り、公害問題の解決に貢献したいと思うようになりました。 また、大学に入ってから、岩波文庫から出された中谷宇吉郎の「雪」とゆう作品に出会って、結晶の形状、析出過程に興味をいだき、研究室で晶析工学を専攻しました。顕微鏡で、 透明な溶液から結晶核が生成する過程を見ていると、液がゆらいで、そのゆらぎの中から 結晶が生まれてきたのです。そのときの感激は、今でも、しっかりと目に焼きついており、 現在もその感激が研究の原点になっています。環境問題と晶析工学の境界領域に、晶析工学を駆使した物質循環型環境浄化プロセスがあって、それが現在の研究につながっているように思います。

エマルジョン結晶化法による炭酸カルシウムナノサイズ結晶の創製

エマルジョン結晶化法による
炭酸カルシウムナノサイズ結晶の創製

先生の研究理念を教えてください。
――― 結晶は生きている。結晶は生物と無生物の間にある。

晶析工学に基ついて、操作、装置の設計、プロセスの開発を行いつつ、希望の結晶を創成 するための新規な概念を地道に追求し、世界に工学的な貢献をしたいと考えています。私の座右の銘としては「結晶は生きている。結晶は、生物と無生物の間にある。」があります。

これからの研究の展望は?
――― ナノメーターサイズの結晶の創成に力点を。

晶析工学においては、液相、気相中の成分が、規則正しく配列した結晶固体になる過程を避けることができません。今の段階では、この液体から固体への変化過程は解明されてなく、21世紀の大きな課題となっています。そこでこれからも、装置内の晶析基礎現象( 核発生、結晶成長、微結晶付着、転移など)に着目して、

を目指していこうと思っています。特に、最近ナノメーターサイズの結晶の創成に力をいれています。高分子電解質の中で、結晶生成をしたり、微水環境で光る結晶を生み出したりと、楽しく研究をおこなっています。

大学と企業の連携で、何が重要とお考えですか?
――― トランスレーター(翻訳者)が必要では。

平沢研究室の風景

平沢研究室 医薬品プロジェクト
超音波班の皆さんとともに

私は企業での研究開発を経験して、大学での研究についたことで、企業の研究開発での取り組みのスタンスも理解ができているので、大学と企業との連携などで必要なことを、それぞれの側へ最適な形で、伝えることができるのではないでしょうか。大学も企業もそれぞれの風土、文化があり、良い点も、悪い点もあるので、できるだけ両者の良い点を最大限に引き出すために必要なことを、それぞれの側にトランスレート(翻訳)するようにしている。これは、決して大学と企業だけではなく、どの分野においても同じことが言えるのではないかと思います。なかなか相手の立場に立って物事を考え、取り組んでゆくのは難しいことでもありますが、ぜひ実行してゆきたいと思います。

ローテクとハイテクの使い道を考えては?
――― 現在のローテクはバカにできない。

実は、ローテクもかなり進歩をしてきておりまして、過去のローテクとは、内容が違ってきていると思います。晶析技術の研究の歴史も古いですから、基本の部分はローテクとしましても、最先端の部分では、ハイテクですよ。だから、私は、いつまでも晶析技術にこだわってゆこうと考えているわけです。まだまだ、理論が確立できてない部分があり、その解明に、若い人たちと挑戦してゆければと思います。

21世紀を担う皆さんへ、メッセージをお願いします。
――― あせらず・たゆまず・楽しんで!

自然界の現象を五感で感じ取って、様々な学問を自分の中に積み上げることによって、社会、世界、地球に貢献して欲しいですね。世の中の動向に右往左往することなく、科学的、工学的に判断する力を身につけて欲しいと思います。 あせらず・たゆまず・楽しんで!皆さん、知のめぐりを良くしましょう。

(文責 広報委員会 委員 亀井 邦明)

平沢先生の研究や経歴について、より詳細を知りたい方は、以下のページも併せてご覧ください。

応用化学科 研究者向けウェブサイト内の平沢先生の紹介
http://www.waseda-applchem.jp/lab/lab011.html?m=la
WASEDA.COM on asahi.com
オピニオン:環境にやさしい21世紀の結晶づくりをめざして
http://www.asahi.com/ad/clients/waseda/opinion/opinion87.html
早稲田大学 理工リエゾンオフィス
【理工学部の先生の最近の研究は?】平沢研究室(応用化学科)ってどんな研究をしているの?
http://www.all-waseda.com/news/research/174