新企画の“先生への突撃インタビュー”がスタートしました。本企画は、教室とOBとの提携を強めることで、早稲田大学の応用化学科が、今後ますます隆盛になってもらいたいと考えたOB会活動のひとつです。 企業の新製品開発などに役に立つ情報を、教室側の先生方に提供していただき大学と企業間の情報交流のきっかけが生まれてくるようにしたいと考えております。可能な限り、素人に理解しやすいような内容とするように心がけてゆきます。
2番手として、木野 邦器教授にご協力をお願いしました。
木野先生は、皆様ご存知のように応用化学科をご卒業された後、協和発酵工業株式会社で、アミノ酸発酵の研究から生産まで従事されました。生産の現場を経験された上で、8年前からご自身の出身の研究室で、研究と同時に若手研究者の育成にあたっておられます。
微生物をほんとに知ったのは、大学を卒業し、企業に入った後でした。グルタミン酸発酵の研究に取り組んだことがキッカケとなり、すでに世界的に研究のレベルが高いところにあったにもかかわらず、さらにグルタミン酸の生産収率を高める成果をあげることができました。この成功をはじめとして多くのバイオプロセス開発研究とその現場への導入体験が、大学に戻ってからの研究にも役に立っています。
21世紀は生物化学の時代と言われ、資源循環型社会の構築やグリーンケミストリーに代表されるように、生物機能を高度に活用した革新的バイオプロセスの開発に大きな期待が寄せられています。多種多様な微生物の機能の多様性が一つの大きな鍵であり、我々人間のありとあらゆる要求に応えてくれるだけの柔軟性と可能性を持っています。微生物を知れば知るほど、その多様性に無限の研究の広がりと可能性を感じています。
先人も言われているように、微生物に求めて裏切られることはない、期待を裏切られることは絶対にないと信じています。
応用微生物研究の分野でも、我々が希望する機能を有する微生物や酵素をデザインすることがある程度は可能となってきています。すなわち、目的活性を有する微生物や酵素を得るために、従来のようにやみくもに自然界から微生物を単離したり変異株を作るのではなく、コンピュータを使って探索したり、シミュレーションによって酵素や微生物をデザインすることができるようになってきています。こうした研究への取り組みには、一つにはデータベースの利用が不可欠であり、また多くのグループとの連携によりはじめて目的を達成することが出来ます。そのため、各研究グループが独創性の高い研究を行うことが、前提として重要になります。
我々の研究グループは、従来から、有用微生物や酵素の探索とその機能改変研究で、大きな実績を残してきており、これら成果を基に、他の研究グループとも連携をとってきています。
今後、どこまで効率的な微生物利用プロセスを作り出すことが出来るか挑戦をしていきます。
木野先生が指導されている研究室のある
かずさDNA研究所バイオ共同研究開発センター
私も企業での研究を行ってきましたから、大学と企業の研究の違いは理解しているつもりです。やはり若い大学の研究者が、大学内の活動だけでなく、学会活動や企業との連携を通じて、さまざまな経験を積み上げることで成長していくのだと考えています。特に、大学だけでは体験しにくいことを、企業との共同研究を通じて行うことができます。
我々は工学部ですから、「新しい有用なモノ」の製造段階までの研究に取り組むことが重要です。連携研究は、企業側からすれば製品をイメージした目的指向の研究のアウトソーシングであり、大学側からすれば目的を明確に持った研究の体験ができるメリットがあります。
これらをスムーズに行っていくには、それぞれの側が得意としさらに設備を持っているところで研究を行うことが効率的で有効であろうと思います。したがって、大学の研究室が、企業内にあっても良いのではないかと思います。
これからの時代は、研究をタイムリーに行っていくために、大学と企業との共同研究もスピーディーに推進していくことが必要です。これらの情報の媒介役を担うのがOBの役割だと思います。大学もOBの皆さんが、もっと大学のキャンパスへ足を運び入れやすくする努力が必要だと思います。大学の研究室の紹介なども、専門分野ごとに接点を増やせるように、その方法を工夫したり回数も増やすことが必要だと思います。今、交流委員会が取り組んでいる講演会に、このような研究室紹介などを加えていただければ、OBの研究室の活動への理解も、さらに進むのではないでしょうか。活性化委員会の今後の活動に多いに期待をしております。
研究の分野は別にして、若い皆さんには、知恵・センスを磨いて欲しい。大学時代は、失敗をおそれずに、いろいろなことに挑戦して体験し、そして素直に感動することが重要です。研究がうまくいかないことの方が多いですが、その過程で、自分自身の思考方法や解決方法を構築し、どのような状況にも対応できるタフな人間に成長してください。
(聞き手及び文責 広報委員会 委員 亀井 邦明)
木野先生の研究や経歴について、より詳細を知りたい方は、以下のページも併せてご覧ください。