中部支部(早化会)第10回交流講演会の報告
去る2013年9月5日(木)に名古屋ダイヤビル231号室にて、第10回中部支部交流講演会が開催されました。
講師には、有機系太陽電池の技術開発、特にフィルム状色素増感型電池や有機系ハイブリッド型(ペロブスカイト型)電池の開発研究で日本のリーダーシップをとって居られる桐蔭横浜大学大学院工学研究科教授宮坂力(みやさかつとむ)氏を招聘致しました。
講演会
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- 講師:宮坂力(みやさか つとむ)氏 桐蔭横浜大学大学院工学研究科教授兼大学研究推進部長
- 演題:「進化する有機系太陽電池の仕組みと印刷式製造方法」
- 略歴:
- 1976年 早稲田理工学部応用化学科修了(篠原研)
- 1981年 東京大学大学院工学系研究科合成化学博士課程修了
- 1981〜2001年 富士写真フイルム(株)足利研究所勤務
- 2001年 桐蔭横浜大学工学部大学院工学研究科教授就任
- 2004年 ベクセル・テクノロジー(株)設立代表取締役兼任
- 2009年より現職。
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要旨
講演は、宮坂氏の開発した「フィルム状色素増感型」と「ハイブリッド型(ペロブスカイト型)」有機系太陽電池の性能向上および製造技術開発をメインテーマに、併せて以下に示すシリコン系や化合物系の太陽電池の市場環境および太陽電池の基礎的な理論等にも敷衍して頂いた。
- 有機系太陽電池の種類とその特徴
- シリコン系太陽電池の市場価格とビジネスの現状
- 有機系太陽電池の強みと弱みおよび応用分野
- 太陽電池のエネルギー変換効率や発電性能に関わる基礎知識
- 宮坂氏の開発したフィルム状色素増感型電池の仕組みと製法および応用分野
- 宮坂氏の開発したハイブリッド型(ペロブスカイト型)電池の仕組みと性能向上の開発最前線
メインテーマの要旨は宮坂氏より開示あった添付資料に、その他の講演の要点は付属資料に纏めた。
有機系太陽電池は、
- 低コスト化(高速低温塗布法)が可能である事と、高性能(高電圧、光の吸収波長をチューニング可、透明・軽量)と化学的ノウハウを内包する“マネの出来ない電池”である強みを活かし、価格破壊が著しいシリコン系とは競合しない分野、例えば、屋内建築資材、モバイル型情報通信機器、自動車および農業資材分野への応用を狙った開発研究が世界規模で盛んに行われている事。
- 特に、宮内氏が1992年に提案したペロブスカイト型は、その後世界各国で追試され、昨年は宮坂氏グループとオックスフォード大学との共同研究で固体膜を適用し変換効率10.9%を達成、更に今年にはスイス連邦工科大学のマイケル・クレツェル教授により15.36%の高変換効率を達成する等大きな進歩を遂げており、有機系太陽電池開発の主流となりつつある事。
- 日本の総エネルギー年間消費量は、約1兆KWH/Yであり、ITによる省エネ効果により総エネルギー消費量は減少しており、他方IT化や情報化社会の発展に伴うIT向けエネルギーは増加している。2030年には総エネルギー消費量の10%以上を占めると推定されており、この増加分を太陽電池の小型発電で埋める事が出来る事。
以上の理由から、宮坂氏は、有機系太陽電池の実用化は、社会と経済面で大きな貢献となることを確信しておられ、今年も東京大学と共同し、同時にNEDOの「超低コストの太陽電池の開発」プロジェクトの依頼を受け、その開発と実用化研究に取り組んで居られるとの紹介があった。
原発トラブルにより日本の将来エネルギーが不安視されているところから、参加者は、新しい太陽
電池の早期実用化に大きな期待を抱くと共に、知的刺激を強く受けた有意義な講演であった。
講演後の質疑応答では多くの質問が出されたが、途中で割愛せざるを得ない盛況であった。
懇親会
近講演会に引き続いて行われた懇談会は、近藤副支部長の乾杯の音頭のあと、宮坂氏を中心に懇談が行われた。
途中、今回初めて参加頂いた柿野氏と若林氏両氏に挨拶を頂き、三島幹事の挨拶で中締めとした。
最後に全員写真を撮り散会となりました。
参加者(敬称略)
<参加者-敬称略>
澤田祥充 旧31回(S25)、 牧野兼久 新8回(S33)、 近藤昌浩 新9回(S34) 、
三島邦男 新17回(S42)、堤 正之 新17回(S42)、 白川 浩 新18回(S43)、
後藤栄三 新19回(S44)、小林俊夫 新19回(S44)、 柿野 滋 新19回(S44)、
友野博美 新22回(S47)、 木内一壽 新24回(S49)、 山崎隆史 新25回(S50)、
服部雅幸 新32(S57)、 西川通則 新36回(S61)、 大高康裕 新41回(H3)、
若林隆太郎 新57(H19) 以上16名
スナップ写真
(各写真は、クリックすると拡大されます)
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挨拶する後藤支部長 | 講演風景 | 質問に答える教授 |
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近藤副支部長による乾杯 | 集合写真 |
文責:堤 正之
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