応用化学会中部支部(早化会)第11回交流講演会報告書
去る2014年10月23日(木)に名古屋ダイヤビル245室で、第11回中部支部交流講演を開催しました。
講師には、大阪大学大学院基礎工学研究科の岡野泰則教授を迎え講演をして頂きました。
演題 :『移動速度論温故知新』-基礎から応用そして半導体からiPS細胞まで-
|
- 講師:岡野泰則教授 大阪大学大学院基礎工学研究科教授
- 略歴:
- 1983年早稲田大学理工学部応用化学科卒業。
静岡大学助教授および教授を歴任し、2010/4より現職。
|
要旨
最初に、講師の早稲田大学卒業以来の経歴や留学先であったカナダ・ビクトリア大学での研究生活の紹介があり、続いて大阪大学及び大学院基礎工学研究科の組織、設立理念および教員や学生数並びに国内大学の財政規模や評価ランクなどについて説明の後演題の講演に入りました。以下に講演の要旨を記します。
- 移動速度論は、コンピュータ性能の向上に伴いシミュレーションによる研究が盛んに行われており、現在では工学的に重要な分野となっている。特に講師は、長年“流体の運動方程式(ナビエ・ストークスの式)の数値解析”に取り組んでおり、静岡大学と大阪大学に於けるその多彩な研究活動が紹介され、現在は移動速度論に立脚した、“ミクロからマクロまで”および“ソフトマテリアルから半導体まで”の領域を統一的に扱う新しい化学工学の構築に取り組んでおられる。
- ノーベル賞に輝いたイノベーションである、青色発光ダイオードGaNのMOCVD製造法(有機金属気層成長法)の大型化やiPS細胞のシャーレサイズの増殖から実用レベルの工業化へのスケールアップには、移動速度論に基づく工学的なアプローチが必要不可欠なことを強調された。
- 講師が早稲田の学生時代から取り組んできた、マランゴニ対流について、@その発生原理と落下塔を利用した微小重力環境下での実証実験の結果、A半導体材料の結晶成長に適用されているチョクラルスキー法の坩堝内溶融液の流れの観察結果、B重力が影響し坩堝内溶融液に高温と低温の流れが混じり均一な結晶の成長を妨げている事、およびCJAXAと共に取り組んできた宇宙ステーション内での微小重力環境を利用したInGaSbの結晶化テストが、今年やっと実施され、そのテスト装置の紹介と得られたサンプルの結晶均一性に改善が見られる事等について、その詳細な内容の説明がなされた。
更に、宇宙ステーションでの結晶化テストの2つ目のサンプルが近々入手されるので、テストの成果が早晩明確になると述べられた。
講演は、高度な専門的内容のものでしたが、講師は実験の映像やシミュレーション画像を使いながら 理解しやすく講演して頂き、受講者にとって興味の尽きない講演でありました。
懇親会
講演会に引き続いて行われた懇談会は、三島副支部長の乾杯の音頭のあと、岡野氏が静岡大学教授時代に支部会へ参加して居られた経緯もあり、氏を中心に演題以外の新しい研究などにもおよぶ和気あいあいの懇談となりました。最後に全員写真を撮り散会となりました。
参加者(敬称略)
<参加者-敬称略>
講師:岡野泰則 新33回(S58)
近藤昌浩 新9回(S34)、佐野正道 新13回(S38)、三島邦男 新17回(S42)、堤 正之 新17回(S42)、白川 浩 新18回(S43)、
後藤栄三 新19回(S44)、須藤雅夫 新22回(S47)、谷口 至 新22回(S47)、
木内一壽 新24回(S49)、 山崎隆史 新25回(S50)、
服部雅幸 新32(S57)、西川通則 新36回(S61)、上宮成之 新35(S60)、鈴木克典 新39回(H1)、大高康裕 新41回(H3) 以上16名。
スナップ写真
(各写真は、クリックすると拡大されます)
| |
|
挨拶する後藤支部長 | 講演風景:1 | 講演風景:2 |
| |
懇親会風景 | 集合写真 |
文責:堤 正之
△ページトップへ戻る