2011年7月15日(金)に名古屋ダイヤビル121号室にて、第7回中部支部交流講演会が開催されました。講師には、JSR株式会社ディスプレイ研究所LCD材料第二開発室室長西川通則氏を招聘、JSR社をはじめとした化学企業の現役会員多数の参加があり、総勢24名の盛会であった。
冒頭、西川氏のキャリアー及びJSR株式会社の事業ポートフォリオの説明があり、次いで主要テーマの講演に入りました。
先ず、液晶(LC)とは何か、液晶TVの液晶パネル(LCD)の構造、配向膜の機能、および液晶TVに要求されるLCDの3モードについて判り易い説明がありました。
特に配向膜は、液晶分子の配列状態(LCD中のLC分子と配向膜の界面における傾斜角(プレチルト角))を精密に制御する機能が必要でLCDの重要な部材を占めることが紹介された。
LCDをカラーテレビ用途に展開するに当っては、従来の高温焼成によるポリイミド膜から200°C程度の低温焼成が可能で、広いプレチルト角域(3〜90°)を発現し、精密な角度制御が可能な配向膜の開発が不可欠でした。
西川氏らは、従来のポリアミド中に長鎖アルキル基やフッ素原子を種々の方法で導入する多くの改良膜を開発したが、何れもプレチルト角の発現領域と安定性及びLCDとしての電気特性をクリアー出来ずに失敗の連続に終わり、これら材料では大きな障壁を乗り越える事が出来なかったそうです。
そこで全く新しい化合物の開発へ方向を定め、先ずベースとなるポリイミドとして、低温焼成化に対応する脂環式骨格を持つ極性溶剤に可溶な新規ポリイミドを開発した。
これをプラットフォームとし、環状アルキル鎖のステロイド骨格(有名な物質はコレステロール)に着目、これをジアミンとして新規ポリイミドに導入し、通常のジアミンを導入した新規ポリイミドとの共重合を行い、共重合比率を変化させる事により、広域内でのプレチルト角を安定的に精度良く制御出来る配向膜が開発された。
この配向膜は、液晶TV用途で80%と圧倒的なシエアーを占めるに至って居り、現在では、LCDの超大型化と高画質化ニーズへの応用研究に取り組んでいるとの紹介があり講演を終えた。→ 詳細は西川氏より提供された講演概要(PDF)を参照
出席者は、急速に普及した液晶TVの開発の裏舞台を知り、それがコレステロールという全く特異な分野に属するケミカルズを利用する事で成功したことに驚嘆するとともに、@ステロイド骨格へ絞り込んだ理由は?A開発したLCDの寿命は?B世界市場での特許化は?C有機ELTVとの競合力は?等々の数多くの質問が出され、大変活気ある有意義な交流講演会を持つことが出来ました。
西川 通則 | 新36回(S61) | 澤田 祥充 | 旧31回生(S25) | 牧野 兼久 | 新8回生(S33) | 笠倉 忠夫 | 新8回生(S33) |
近藤 昌浩 | 新9回生(S34) | 三島 邦男 | 新17回生(S42) | 堤 正之 | 新17回生(S42) | 白川 浩 | 新17回生(S42) |
後藤 栄三 | 新19回生(S44) | 小林 俊夫 | 新19回生(S44) | 秋山 健 | 新19回(S44) | 古山 建樹 | 新20回生(S45) |
須藤 雅夫 | 新22回生(S47) | 木内 一壽 | 新24回生(S49) | 山崎 隆史 | 新25回生(S50) | 金原 和秀 | 新32回(S57) |
神品 順二 | 新33回(S58) | 藤井 高司 | 新36回(S61) | 佐藤 昇 | 新37回(S62) | 丸山 洋一郎 | 新39回(H1) |
新村 多加也 | 新39回(H1) | 大高 康裕 | 新41回(H3) | 加藤 昌史 | 新41回(H3) | 林 泰斗 | 新51回(H13) |
以上24名 |
講演会に引き続いて行われた懇親会では、近藤副支部長の乾杯の音頭のあと、西川氏を中心にした熱心な交流が行われた。懇親を大いに深めた後に、今回東京より参加頂いた神品順二氏よりエールを頂き、三島幹事の挨拶で中締めとした。最後に全員写真を撮り散会となりました。