2009年10月31日(土)、JR大阪駅近くの大阪弥生会館にて今年度の早桜会講演会を開催しました。当日の参加者は17名で、卒業年度1957年から2007年まで半世紀の多世代に及び、また早桜会始まって以来、はじめて女性2名の方が参加され、近年になく非常に盛大にかつ和気藹々と催されました。参加者は皆、すでに本講演内容にたいそう深く関心をもたれており、数多くの方のご質問が日野先生に熱心にされ、こんなに質問が飛び交う講演はあまりないのではと思うほど大盛況でした。
なお、皆様、すでにご存知と思いますが、国立循環器病センターを簡単に紹介しますと、循環器病に関する先端的な治療と研究を推進すべく昭和52年に設置され、設立30年目を迎えます。国立循環器病センターは、複雑な循環器病を克服するために、色々な分野の専門家の協力体制を強化され、移植医学、人工臓器医学等、さらには遺伝子治療や、本人の細胞から組織や臓器を作る再生医学等を取り組まれており、循環器病において、すでに相当な実績をあげられており、循環器病の我が国の先導的な位置づけです。
それでは開催を報告します。まず、脇田理事の名司会のもとで、国立循環器病センターの日野 純先生(生化学部室長)がこれまでの経歴、楽しかった早稲田学生時代(鈴木研)の思い出(スライド紹介)、さらにご家族のお話しなど、時おりユーモアをまじえ、ゆっくりと、できる限りわかりやすく話されました。
次ぎに「未知の生理活性物質の発見を目指して」の講演が始まりました。 講演内容を紹介します。
様々な生理作用、例えば神経伝達、血圧調整、脂肪代謝、骨形成、等々に関わっている生理活性物質は、我々の体を常にバランスよく健全に働くように作用するという、重要な役割を担っています。
この生理活性物質は、生体内においてごく微量しか存在せず、そのため単離精製・構造決定は容易ではありません。日野先生は、多くの種類に分類される生理活性物質の中でも、ペプチド性やタンパク質性の因子の探索研究に携わり、これまでにいくつかの新しい因子の同定を行ってこられました。今回は、その中でも、現在、主として取り組んでいます、タンパク質性生理活性物質・分化調節因子"BMP-3b"について、その発見の経緯と機能を紹介されました。
本因子は、骨形成に関与するタンパク質として同定したが、その後の研究で、興味深いことに骨形成とは直接的に関連性のない、初期発生時期の脳・神経系誘導に必須であること、更に、最近、脂肪細胞の分化調節に関与していることも明らかにされました。これらの話題を中心に、その他のペプチド性因子についても、実際に携わった仕事の中から、心臓疾患と関連した応用研究などについて、話されました。
心臓疾患に関わる研究としては、ヒトにおいて、心臓疾患の程度が重症になるにつれて、生理活性ペプチド(BNP)の血中濃度が、著しく上昇することを明らかにされました。その他の生理活性ペプチドについては、心筋梗塞モデル動物などを用いた実験系で心臓を保護する効果が見出された等の臨床応用を目指した基礎研究にも共同研究者として携わられました。
以下、講演会で、大変熱心な質疑応答の中で、一部を簡単にご紹介します。
なお、今回の講演内容にご関心のあるかたは、直接、日野先生にメールお願いいたします。
日野先生の連絡先(email:jhino@ri.ncvc.go.jp)(ご使用の際は@を半角にしてください)