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木野教授

2010年9月25日（土）、ＪＲ大阪駅近くの大阪弥生会館にて応用化学科　木野 邦器 教授（理工学研究所長）をお招きして、平成22年度の早桜会講演会を開催しました。当日の参加者は32名で、卒業年度1957年から2009年まで広い世代の会員が参加し、関西支部が正式に発足して以来、最も盛況かつ大変和やかな雰囲気の講演会となりました。今回の演題である「微生物有用酵素の探索とバイオプロセス開発研究への展開」 では微生物の持つ不思議な多様性と特殊性を利用した、最先端のバイオ研究を木野先生にわかりやすくご紹介いただきました。

微生物を利用して有用な物質の工業生産化するという「バイオプロセス」は糖質からグルタミン酸を生産するというアミノ酸発酵の工業化から始まり、現在約５０年がたちました。皆様ご存知のように、木野先生は学生時代、企業研究家時代、そして現在に至るまで一貫してこのバイオプロセスに関する研究を進められてきました。本講演では現在、精力的に進められているご研究の中から３つのテーマについて紹介されました。

講演会の風景

まず、市橋副会長の司会で開演後、木野先生が早稲田学生時代（宇佐美研）のエピソード、企業研究者（協和発酵工業(株)）時代のご研究、そして早稲田大学に移られた経緯や現在までの研究・役員等のご経歴を時おりユーモアをまじえてわかりやすくご紹介されました。以下、講演内容をまとめます。

微生物を利用して有用な物質の工業生産化するという「バイオプロセス」は糖質からグルタミン酸を生産するというアミノ酸発酵の工業化から始まり、現在約５０年がたちました。皆様ご存知のように、木野先生は学生時代、企業研究家時代、そして現在に至るまで一貫してこのバイオプロセスに関する研究を進められてきました。本講演では現在、精力的に進められているご研究の中から３つのテーマについて紹介されました。

まず、非天然型アミノ酸の生産研究として、芳香族アミノ酸の光学異性体から他の光学異性体を効率よく生産することを目指したアミノ酸アミノトランスフェラーゼ（アミノ酸とα-ケト酸の間に起こるアミノ基転移を触媒する酵素）の研究と、有用な医薬品やその原料となる水酸化アミノ酸（５-ヒドロキシ-L-トリプトファンや４-ヒドロキシ-L-イソロイシン等）の効率的な生産を目指したアミノ酸水酸化酵素の研究紹介がありました。

次に、バイオプロセスを用いたペプチド合成に関する研究のお話がありました。アミノ酸が数個連なった「ペプチド」はアミノ酸単体には無い独特の生理機能を持つことが知られています。哺乳動物等の高等生物の持つペプチド合成経路は非常に複雑でバイオプロセスに用いるには不向きですが、木野先生は微生物には特殊なペプチド合成酵素（アミノ酸リガーゼ）が存在することを見いだされました。今回はペプチド性抗生物質リゾクチシン生産菌からの新規L‐アミノ酸リガーゼの取得やリゾクチシン合成経路の解明研究等の紹介がありました。

最後に大変高性能な機器分析装置であるFT-ICR MS用いた微生物のメタボノミクス研究（代謝産物の網羅的解析研究）をお話されました。微生物の酸化酵素とトリテルペン等の研究対象の基質を加え反応液中の代謝産物を質量分析（MS）により網羅的に分析して、目的の産物を産生する微生物や酵素を探索する技術とその研究成果を紹介されました。

その後、質疑応答の時間を設け、先生から研究室の現状、バイオ研究を続けていく上での研究費、研究人員等でのご苦労をうかがうことが出来ました。どの話題も最先端のゲノム情報や情報解析技術、遺伝子工学技術等を駆使したご研究で、ハイレベルな内容でしたがわかりやすく解説をしていただき、大変有意義な時間を持つことが出来ました。改めて参加者一同、木野先生に感謝いたします。

以上　（斎藤幸一　記）

講演会終了後、第2部として木野先生を囲んでの懇親会となりました。和田理事の司会のもと、井上会長挨拶、川口先輩の乾杯の音頭ではじまり、しばらくはアルコールを飲み、歓談しました。その後、司会の指名で木野先生初め、初参加者の挨拶、指名された数名のスピーチなどで会場は盛り上がりました。木野先生を囲んでの楽しい談笑の輪が幾つもできていました。最後は全員で校歌斉唱、中野理事のエールで幕を閉じました。更に、有志で木野先生をお誘いして、近くの居酒屋でささやかな二次会となり、一層盛り上がった一日となりました。