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2010年度早桜会最後の行事として、2月19日(土)16;00〜18;00にわたり、中央電気倶楽部会議室で表題懇話会開催となりました。"シャープの液晶よもやま話"と題して、篠崎匡巳氏(80年卒、シャープ勤務)に講演いただきました。
講師は自己紹介後、まず、液晶について概要説明がありました。 液晶表示とは、電界の強度によって液晶分子の配向状態を変化させ、入射光の伝搬、干渉、施光、吸収などの光学的変調効果を利用して表示する方式をさします。そして、ディスプレイに応用される液晶の電気光学効果は、液晶分子の配向変化に伴う各種の光学的変調効果にもとづいており、液晶の駆動とはこのような光学的変調効果を引き起こす液晶分子配向の変形を誘起させるための電気的エネルギーの供給になるという原理について説明がありました。
液晶表示素子の駆動には交流が用いられており、必要な電圧は低電圧であり、LSI技術の発展とともに、低消費電力型の大型液晶ディスプレイとして発展しました。現在、皆さんがよくご存知の液晶駆動はTFT駆動でしょう。また、昔のワープロではデューティ駆動が使われていました。 TFT駆動とはTFT薄膜トランジスタをスイッチング素子として用いることであり、TFT駆動により液晶の高速応答が得られ、高画質につながります。昔のワープロ、ラップトップパソコンなどの分野ではデューティ駆動が使われていました。この駆動方式は液晶を上下にはさんだ電極により、上下電極の各交差部を1素子として表示する方式です。しかし、上下電極の本数を増加させると駆動動作が遅くなり、画質は悪くなり、現在デューティ駆動はほとんど使用されなくなりました。
次に、これまでのシャープの液晶事業の歴史について触れられます。 2011年はシャープが液晶ディスプレイの量産を世界で初めて開始してから38年目です。まず、1973年に電卓の最適なディスプレイとして商品化を世界で初めて行いました。1986年には上記で説明しました昔のワープロ、ラップトップパソコンなどの分野で10インチ級に成功しました。これは当時オフィス機器の花形であったワープロに採用され大ヒットしました。さらに、液晶ディスプレイのカラー化、高解像度化、大型化が求められ、TFT液晶の開発と量産化を急ぎました。そして、1988年に14インチ級の液晶テレビの試作品を発表しました。1990年代の後半になってTFT液晶の大型化、高解像度化、低価格化がどんどん進み、2001年1月発売の液晶TV「アクオス」の登場となり、現在までつながります。
講師は1990年代に熾烈な液晶の特許戦争を社内で主担当しました。解決するまで10年近くかかり、大変苦労されましたが、シャープ社内の技術部門の協力により、何とか切り抜けることができました。その時に経験しました調査の重要性は今でも宝として残っています。特許戦争について幾つかのエピソードをまじえて説明されました。
最後に、シャープの創業者の早川氏について説明されました。大変苦労した丁稚奉公時代や、幼いときに継母のいじめから、ひどい栄養不良状態になり、その境遇の早川氏を助け出した盲目のおばあさんの話など数えきれない心温まる話の紹介がありました。
懇話会終了後は、いつも通り居酒屋に席を移しての和やかな雰囲気のもと、東京からの参加者、劉さんも交えて盛り上がりました。
当日の参加者
津田 實(57)、井上征四郎(62)、吉崎洋之(65)、市橋 宏(67)、田中航次(67)、志摩憲一郎(80)、篠崎匡巳(80)、斉藤幸一(83)、脇田克也(86)、中野哲也(87)、劉 雲龍(06)