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2012年度早桜会第2回懇話会を12月1日(土)15:00〜17:00大阪中央電気倶楽部で開催しました。今回の講師は、元東レの井上征四郎氏(62年卒、早桜会会長)で、"私の技術経営(MOT)"と題して講演いただきました。
第1部まず、入社直後に意に反して配属された研究管理部門での苦労、念願かなった研究開発業務を経由して、技術開発および製造現場へ出、いくつかの海外子会社への技術指導、海外での工場建設・経営、日本の生産現場での実績を積み上げられた経験を時系列的に話されました。実に各種の業務を経験され、まさに日本の高度成長期を生産の面から支えてきた技術者の姿がまざまざと浮かび上がってくる思いでした。
その中でも特に印象に残った業務として、最初に手がけた新製品開発業務で数々の技術的課題を克服して、生産化および販売化にこぎつけた感動、工場生産現場に残る因習との戦い、営業現場からの要求と生産現場との考え方の違いをいかに埋めるか、方針の違いがあるときに相手が役員といえどもいかに説得するかなど、直接製造部門、スタッフ業務にかかわらず、やはり苦労を重ねた仕事ほど印象深く残るということのようです。他にも事業縮小、事業撤退をするべきかどうかの判断、赤字部門をいかに立て直すか、事業の多角化などの苦労、この思いが技術経営という考え方に至った背景とのことです。
第2部次に、技術経営(MOT)という考え方に話が進み、この考え方が生まれた背景には1980年代にアメリカが双子の赤字に苦しんだことがあり、その解決法の一つが、当時大躍進中の日本企業の生産活動を学んだ結果であるということです。その経営法を体系的に教育するために、アメリカでは80年代いろいろな大学・ビジネススクールに技術経営講座が誕生しました。日本に波及したのは、20年遅れて、2000年代になってからということです。技術経営を定義的に言えば、一つの例として「企業の全知識、技術、経験、全機能、人材、設備、資金を技術という幹で再編、活性化、効率化を図ること」ということになるとのことですが、なかなか抽象的で理解しにくい部分も現今の勢いを失っていく日本のメーカーの実情を例に引きながらの説明であったため、きわめて身につまされて理解することができました。技術経営の要諦は、絶えざるイノヴェーションを続け、環境変化に如何に的確に対応するか、スピーデイかつ勇気ある決断をすることにあると強調されました。また、技術者のあり方について、感性と能力、責任と倫理などの観点から基本的なことについて解説されました。
現役世代には、耳の痛い話も数多くあったことでしょうが、今後の技術者、研究者としての考え方の一助に十分になったことと感じました。質疑応答の時間が十分取れなかったのは残念でしたが、いくつかの質問にも答えていただき閉会となりました。
懇話会終了後は、いつもの居酒屋に席を移して、更に質疑応答の継続から原発問題、間近に迫った選挙の話題にも話が及び、楽しい時間を過ごしました。
(田中 記)
当日の参加者
津田 實(57)、井上征四郎(62)、前田泰昭(64)、吉崎洋之(65)、岩本皓夫(67修)、井上昭夫(67)、田中航次(67)、辻 秀興(67)、中島正臣(67)、山添勝巳(72)、岡野泰則(83)、脇田克也(86)、高島圭介(98)、數田昭典(01)、澤村健一(03)