早稲田応用化学会関西支部(早桜会) 第5回講演会報告

(各画像は、クリックすると拡大表示されます)


講師の菊地名誉教授

早桜会第5回講演会を11月9日(土)、大阪弥生会館(大阪・梅田)で開催しました。 今回は、昨年3月定年退職された菊地英一名誉教授にご自身の専門分野における歴史と今后のご活躍分野についてご講演頂きました。

講演内容は、燃料化学の早稲田における歴史、菊地先生の業績、退職後のお仕事のお話でした。特に我々の知らない昔の先生方の話は当学科の研究教育の考え方のルーツであることを知り、とても興味深く拝聴させて項きました。

応用化学科の創始者である小林久平先生の酸性白土のエピソードは、何も研究道具のない時代に何が大切かを示唆してくれるものでした。リトマス試験紙を常に持ち歩いて何でもためしてやろうという好奇心は発見に繋がるし、pHがわかることはサイエンスに繋がるものです。ブレークスルーをする発見が、サイエンスを発展させ,新たな発見をうみ出すのではないでしょうか。

講演では「進化するテクノロジーには裏付けとなるサイエンスがある」との表現をされていましたが、発見だけでは研究は進みません。サイエンスを知ることにより普遍性のあるテクノロジーができると思われます。先人達がやめてしまったテーマの中にサイエンスの種があったのに続けていれは"もっと発展できたのにというお話には、種はたくさんあるけれども成長させる畑を耕す土壌がなければ、育たないということで、何か昔そんなことを教えてもらった記憶があります。

講演会の様子

先生の研究は石油ショックと環境規制という時代と深く関係しているようです。石油から都市ガスを製造する触媒の研究、C1化学、水素を作る触媒の研究、メンブレンリアクターの話等をつなぎあわせると究極にクリーンエネルギーをいかに効率よく作れるかにいきつきます。そのための必要な触媒は何かということを見つけ出すこと、新触媒、新反応、新概念、ベースとなるScienceの追及がメインテ−マだと解釈いたしました。

菊地先生は最近エチルベンゼンの脱水素反応で加えられる水蒸気は単なる希釈材であるとみなされていた定説を破って、水が触媒に格子酸素を補給しこれが積極的に脱水素反応に関与している事実を発見され、この発見をベースにより高活性な触媒を開発されました。

太陽と水と空気のコントロ-ルをすることが我々の最終目標(残念ながら未だにコントロ−ルできていない)ならば格子酸素の話等は色々な現象をサイエンスの目で見るヒントになると思われます。ご定年後の先生は経済産業省の「未来開拓研究プロジェクト」に参画され、太陽エネルギーから水を分解して水素を作るという夢の技術に挑戦されています。

講演会終了後は会場を移して、菊地先生を囲んでの懇親会となりました。菊地先生と同学年卒業の前田さんの乾杯の音頭で始まり、司会の中野理事の指名で数名がスピーチに立ち会場は盛り上がりました。菊地先生を囲んでの談笑の輪が続き、和やかなうちに時が過ぎお開きとなりました。その後菊地先生をお誘いして会場近くのハイボール酒場で2次会となりました。

70才をすぎても常に新しいものを手掛け、好奇心を持って創作に没頭した葛飾北斎の様に生きたいという先生の今後のご活躍を祈ってやみません。どうかお体に気をつけて頑張って下さい。


集合写真

懇親会風景

(山添 記)


懇話会出席者(20名)
津田實(新7回)、井上 征四郎(新12回)、前田 泰昭(新14回)、岩本晧夫(新15回) 、市橋宏(新17回)、田中航次(新17回)、辻秀興(新17回)、山添 勝巳(新22回)、伊藤 喜一(新25回)、浜名 良三(新29回)、岡野 泰則(新33回)、和田 昭英(新34回)、上宮 成之(新35回)、脇田克也(新36回)、中野哲也(新37回)、島圭介(新48回)、數田昭典(新51回)、澤村健一(新53回)、田中 啓介(新55回)、陳 鴻(新57回)

△ページトップへ戻る