同期会便り

新23応化同期会と特別講演会の開催報告


懇親会の記念写真


40年前の記念写真

記録的寒波が西日本を襲い始めていた1月23日(土)に、早稲田大学理工学部応用化学科を1973年に卒業、また1975年に研究科修士を終了してから40有余年、初めてとなる新制23回の同期会を、西早稲田キャンパスで開催しました。
本同期会開催に当たっては、尽きない好奇心を満たし、新たな視点と視野を広げる一助とするために、「懇親会」の前段として、同期の代表3名による「特別講演会」を開催しました。また、この講演会を公開方式としたことから、和田宏明教授、井上健応化会広報委員長にもご参加いただいくことが出来ました。


1.特別講演

  1. 有山達郎氏:『歴史の中の鉄、そしてこれからの鉄鋼業の行方』


    有山達郎氏の講演写真
    有山達郎氏の略歴
    工学博士 東北大学名誉教授
    1975年:化学工学修士課程修了(平田研)
    1975年:日本鋼管(NKK)入社
    1982年:ドイツ・アーヘン工科大学留学
    1999年:NKK総合材料技術研究所製銑研究部長
    2005年:JFE スチール研究所主席研究員
    2006年:東北大学多元物質科学研究所 教授
    2013年:東北大学名誉教授

    酸化還元電位の観点から、銅に比べて鉄の製造は高度な技術を要し本格的な活用が歴史的に遅れたこと、「鉄は国家なり」でドイツ統一を進めた鉄血宰相ビスマルクが鉄製の大砲を使って、青銅製の大砲を使うフランス軍を打ち破ったことなどの話題の後に、高炉内のモデル解析と廃プラスチックの高炉への活用など学術的かつ実践的な成果、および地球温暖化対応、高炉のダウンサイジングの構想を提示しました。
    平易な語り口ながら、講演者の歴史観と世界観を感じさせる講演でした。

  2. 畠秀幸氏:『エンジ会社のプロジェクトマネジメント』

    畠秀幸氏の講演写真
    畠秀幸氏の略歴
    東洋エンジ(株)プロセス部
    1975年:化学工学専攻修士課程修了(城塚研)
    1975年:東洋エンジニアリング入社
    ○エチレン、石油化学、石油精製、ガスのプロセスシステム部長
    ○東南アジア、東アジアでの石化関連のプロジェクトエンジニアリングマネジャー
    ○南米での技術営業
    など歴任
    クライアントに対するフィジビリティスタディ(feasibility study)の要件に始まり、プロジェクト事業の完成に向けての人とモノのプロジェクトマネジメントの実行方法について、英文で書かれたPPを示しながら説明しました。また、エチレンプラント建設現場を、基礎工事から、塔槽類設置工事、配管工事、完成まで、鳥瞰的な航空写真を連続的に映し出しました。
    最後は、個々人の資質を生かした人財育成に尽きるという結論でした。

  3. 伊藤雅行氏:『MBAとMOT(Management of Technology)』


    伊藤雅行氏の講演写真
    伊藤雅行氏の略歴
    東京農工大学専門職大学院技術経営研究科教授
    1975年:応用化学専攻修士課程修了(大坪研)
    1975年:三菱金属(現:三菱マテリアル)入社
    1985年:スタンフォード大学留学、MBA取得
    シリコン事業部長 などを歴任
    2005年:東京農工大学大学院産業技術専攻教授
    MOT(Management of Technology、技術経営)は、企業が革新的な技術を展開する上での経営判断となる指針である。米国の経営学の教育現場では、MBA(Master of Business Administration、経営学修士)に包含しているという。MBAが人、モノ、金、情報、技術という既知なもの扱うのに対し、MOTは革新的な技術に特化しているそうである。
    専門職大学院での授業さながらに、最新型のアップルiPhone6を徹底討論するための教材に挙げて、その売上げ原価の内訳を分析し、また付加価値獲得額の内訳を推算することによって、アップル社の付加価値獲得額に占める割合は約75%であることなどを示しました。この結果から、革新的な技術が重要であることに相違ないが、それは国境を超えて瞬く間に移転すること、またそれを有する素材、部品よりも最終製品化が付加価値を生みだすことなど、技術経営(MOT)上の課題を導き出しました。
    経営学での徹底討論を取り入れた実践的な事例研究(ケースメソッド)を繰り返す教育は、医学でのインターンシップ、法学でのロールプレーイングに相当します。徹底討論は時間切れで割愛となりましたが、企業にとり、また一技術者とっても、MOT教育の重要性を実感しました。
2.懇親会

竹内ラウンジで開催された「懇親会」では多いに歓談し、旧交を温め、自己紹介では、次のような話題で盛り上がりました。

懇親会での一コマ

1.キャリアに関する話題
水銀法からの転換でイオン交換法の設備を輸出した話し、企業の合併が続いた話し、化学会社の火災のアンダーライティングでは人材不足のリスクが高まっている話し、海外駐在中にイラクのクウェート侵攻に遭遇した話し、やくざが闊歩していた八幡製鐵所で営業活動費を一夜100万円使われた話し、来週からパキスタンへの出張でテロを警戒している話し、出願した特許が大化けしそうな話し、開発した衝撃吸収材を西武球場の外野フェンスに活用した話し、サッカー日本元監督岡ちゃんが大学の後輩として入社・退社した話し、特許関係に従事した話しなど


懇親会での一コマ

2.健康に関する話題
医者の見立てより自分の見立てが正しい話し、心臓にステントを埋め込んでいる話し、胆のうを摘出しても元気な話し、早寝早起きを実践している話しなど


懇親会での一コマ
3.悠々自適な生活の話題
大殺界を信じてリタイアした話し、役員からHappy Retirementを果たした話し、地域のボランティア活動の話しなど
このように、話は尽きませんでした。
このため、次回はもう少し時間をとって、同期の仲間が、その時代背景のもとで、世界に、社会に、企業に、そして部門に、どうのように貢献してきたか、また貢献し続けているかを、じっくりと話してもらった方が、より良いのではとの意見も出ました。

ややもすると、老人会に陥りやすい同期会に、公開公式の講演会を組み入れた新たな方式は、応化会の活動に一石を投じました。
なお、本会の剰余金:26,126円は、応化会に寄付させていただきました。

今回の参加者は17名でした。
次回も趣向をこらして開催する予定ですので、これからも、“ご安全に”お過ごしください。
注)ドイツの炭鉱で使われていた“ご安全に!”という所内の挨拶が、日本の製鉄所に伝来したそうです。・・・・安全第一、健康第一

参加者:敬称略
秋山勤、明渡正勝、有山達郎(幹事)、伊藤雅行、海野信、大出謙、大内章吉、小野崎正樹、彼谷政雄、小林幸治、谷口永久、寺嶋正夫(幹事)、鍋島洋一、長谷川栄一、畠秀幸、三上知樹、矢崎雅俊(幹事)   以上17名

(文責:矢崎雅俊)